看護系学部をなんとか卒業して、看護師資格も取得したが、看護師として働くことをしなかった理由。
医療系を目指したのは、誤解を恐れずに言えば誰かの人生に干渉したかったから。
そのひとの人生に干渉することで自分を示したかったから。
凄い誰かの人生に関わり命を救った人間になりたかったから。
未来ある若者の未来を守りたかったから。
今の医療は、人間の未来を守っているのだろうかという疑問が拭えなかった。
いずれ死ぬ人間のお世話をしたところで、自分が干渉したという証は数年後にはこの世から消えるので。
自分の存在証明をできるとは思わなかったから。
看護師、介護士の給料を上げようという論調。
もちろん働く人たちには相当の対価を払うべきだと思うのだが、私の意見は違う。
給料を下げるべきではないか。
なり手を減らして、老い先短い老人の相手に若い人のエネルギーを消費しなくていいと思っている。
昨年、祖父が他界した。
体が弱っていても病院にも行きたがらず、足掻くことなく苦しむこともなく、文字通り眠ったまま帰らぬ人となった。
大好きな祖父がいなくなるのは悲しかったが、眠るような祖父の最期の姿は安らかで、これでよかったのだと思わせてくれる安心感があった。
あれこそが人間の本来の死に様ではないだろうか。